もうひとつの、蜜白玉のひとりごと

些細な出来事と記憶の欠片

2014-01-01から1年間の記事一覧

冬の日に映える

秋の終りの、ある晴れた日のこと。誰の予想よりも早く、小さな女の子がやってきた。そっと腕に抱くと、温かさと確かな重みがあった。自然と涙と鼻水があふれ、あふれたところで私の両手は塞がっていて、不慣れ過ぎて片手に抱き直すこともできず、見兼ねた助…

扉の向こう側

アコースティックギターを始めることにした。音を奏でる生活が恋しくなったのだ。子どもの頃、ピアノとフルートを少し習っていたが、どちらも取り立ててうまくなることもなく、引っ越しを機にやめてしまった。高校では音楽を選択しなかったし、大学でも特に…

当選金のつかいみち

もし宝くじが当たったら地元の商店街で本屋さんをやりたい。 お酒を飲みながらヘラヘラと話をして楽しんでいたとき、不意に口をついて出た言葉だけれど、「本屋さんをやりたい」、もう少し薄めれば「本屋さんがあったらいいのにな」というのは本当のことだ。…

部活がんばる

ああ、こうして今年も残すところあと2ヶ月。カレンダーの残りが少なくて頼りない感じ。11月は講演会聴講の予定が目白押しだ。仕事のものあればプライベートのものもある。 出かけていって人の話を聞くのは好きだ。ものによっては予習すればさらに楽しく聞…

できることなら雨の日にひっそりと

というわけで、喜々として神奈川近代文学館で開催中の「須賀敦子の世界展」へ行き、江國さんと湯川さんのお話を満喫した。 日曜日、しかも「文字・活字文化の日」を記念して観覧無料ということで、午前中から人が多い。午後には対談もあって、天井の低い細く…

江國香織さんと湯川豊さんの対談記録~須賀敦子の世界展

須賀敦子の世界展 記念対談 「須賀敦子の魅力」 出演:江國香織さん(作家)、湯川豊さん(文芸評論家、「須賀敦子の世界展」編集委員)日時:2014年10月26日(日)午後2時開演会場:神奈川近代文学館2階 展示館ホール <注>以下は、蜜白玉の聴講…

山の家、ヤモリ

売るにしたっていつ売れるのか、いや、そもそも買い手が現れるのかどうかさえ、素人にはさっぱりわからない『実家を売却する話』が夏の終わりに急に加速し、しばらくはそれにかかりきりとなった。実家は私の結婚後に建てた家だから私は一度も住んでいない。…

夏は過ぎ、また富士日記

昨年の夏を教訓に、文句を言い言いただひたすら耐える「猛暑日+熱帯夜」×連続何十日を覚悟していたのに、結局雨ばっかりザーザー降って今年の夏はあっけなく過ぎてしまった。最高気温30度以上の真夏日もどうやら最後になりそうだという、昨日の東京は29…

腹・裏腹

笑えるくらいの不調続きで、今週は週の半ばに腹痛に襲われついでに背中も痛くなり、いったい腹の中で何が起きているというの。貧血のため鉄剤を処方してもらっているいつもの先生のところで、先生いままさにお腹がこのように痛いのですが、と訴えるとどれど…

突然のマリモ愛

事の発端は職場での昼休みの会話にて、北海道土産に買ってきたマリモが部屋にあるんだけど、あれってどうやって育てるんだろうね、と誰かが軽い気持ちで空中に放った質問だった。小瓶に入った定番のお土産品として、沖縄土産が「星の砂」ならば、北海道土産…

「焼き肉」考

焼き肉が消化不良なんだよね。といっても、食べた肉がお腹で消化不良を起こしているわけではない。およそ半月前、お盆休みのど真ん中に夫の実家に帰省したとき、姪たちと行った焼き肉がどうも不完全燃焼だったようなのだ。あの日から焼き肉がチラチラと頭の…

流れ着いたところ、4年かかった言葉の意味

「消費をやめる」のタイトルだけはちらちら耳にしていた。おもしろい出版社として注目しているミシマ社のツイートから、朝日新聞夕刊の「人生の贈りもの」に著者の平川克美さんが出ていることを知り、さっそくチェックする。どうやら父と同世代の方のようだ…

私のお腹には双子の筋腫ちゃん

読書会メンバーK氏からの紹介で川上未映子「きみは赤ちゃん」を読む。著者の妊娠から出産までの生活記録「出産編」と、子どもが1歳になるまでの記録「育児編」からなるエッセイだ。読書会ではいつも、課題本についてひととおり語りつくしたあと、休憩をは…

カオナシあるいは虚無

いろいろなことが進行中。こんなに気忙しいのに、でもどれもこれも私のことじゃない。こっちは誰かの代理、あっちは誰かの手伝い。 それも悪くない。当てにされれば、自然と力もわく。頼ってくれてうれしい。そしてたぶん、私ならやれる。どんと来いだ。それ…

彼女たちのワンピース

その映画を見るなら断然、季節は夏で、今くらいがちょうどいい。日の光がまぶしくて、頭がぼーっとして、周囲の音が遠ざかるような、そんな日がうってつけだと思う。暑さにやられ脱力した自分の隣にそっと差し出される、ちょっとわけのわからない物語。空っ…

おはよう、おかえり

押入れの下の段をゴソゴソ。奥から重いダンボールを引きずり出す。息を止めてホコリをかぶったふたを開け、15年前のミシンをテーブルに出す。コンセントをさし、電源スイッチを入れる。手元ランプがつく。足踏みコントローラをおそるおそる踏む。・・・動…

祝辞兼訓辞

夫婦だー!と言って区役所前の道路をバーっと走って、タクシーにピッてクラクション鳴らされてから、10年がたった。 昨日、世田谷文学館「クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会-星を賈る店」のおかしなトークショーその4[金曜日の本と未来の本]を聴…

春の気配

寒がりの夫がめずらしく、最近そんなに寒くない、とぽつりと言った。 3月に入ってもしつこく南下してくる寒気のせいで、相変わらず北風がびゅーびゅーと吹きつける朝の通勤路、おお寒い!と縮こまりながらも、まぶたで受け止める日差しには春のぬくもりを感…

うまくいかない理由

寒さ続きでガッタガタ。あちこち痛かったりかゆかったり、熱っぽかったり、からだの調子が悪いと気持ちまでふさぎ込んでくる。気持ちがへこむとからだの具合も悪くなる。からだが先か、気持ちが先か、いつもはっきりとしないけれど、それらがつながっていて…

雪たのしー

雪は朝には止んでいた。朝ごはんもそこそこに足首よりも深い雪を踏みしめて、近所の小学校まで投票に行く。今回の都知事選はこの積雪できっと史上最低の投票率をたたき出すに違いない。ガラガラにすいた投票所であっさり用事を済ませ、一面の雪原になったグ…

ここはどこでしょうか

東京に45年ぶりの大雪が降った。むかし札幌に住んでいたから雪景色は見慣れているものの、いつもの東京が真っ白になっているのはそう簡単には解せなくて、いま自分がどこにいるのか一瞬わからなくなる。5秒くらい見ていると、自然とのどの奥から笑い声が…

ひとりごと -- 1月前半

2014年01月13日(月) 正月休み雑録 この3連休が終ればようやく日常に着地するのか。休日が多すぎてこっちが「日常」になってしまいそうで、そうなるともう二度とあちら側に戻れないのではないかとそわそわする。 年末年始のほとんどを家の掃除と片付けに費や…