もうひとつの、蜜白玉のひとりごと

些細な出来事と記憶の欠片

ここはどこでしょうか

東京に45年ぶりの大雪が降った。むかし札幌に住んでいたから雪景色は見慣れているものの、いつもの東京が真っ白になっているのはそう簡単には解せなくて、いま自分がどこにいるのか一瞬わからなくなる。5秒くらい見ていると、自然とのどの奥から笑い声がもれる。東京がこんなに雪に埋もれるわけはないので、信じられなくておかしくて笑ってしまうのだ。

東京は結局1日で30センチ近い雪が積もった。ほとんど外出禁止令みたいなニュースを横目で見ながら、サラサラと降り続く雪がどんどん降り積もっていく様子を何度もカーテンをめくっては確かめた。夕方には風も強くなり吹雪になった。屋根に積もった雪が強風にあおられて再び空に舞い上がる。こんなの全然東京じゃない。

明日は朝のうちに雪かきだと気持ちがはやる。マンションの住人はきっと誰も率先して雪かきなどしないだろうけれど、そんなことはどうでもいい。ボランティア精神なんてものでもない。30センチ積もった雪をそのままにしておくとどういう状態をまねくか、彼らはおそらく知らないに違いない。いったん真昼の日差しを受けて解けた雪がぐちゃぐちゃな形のまま凍ると、翌朝にはボコボコと高低差のついた、でも表面はツルツルのとてもたちの悪い路面になる。そうなる前に適当な位置にどけてしまわなければならない。

雪かき用スコップはマンション内のごみ置き場に用意されていると、エレベータの横に貼紙がしてあった。今回はチリトリで代用しなくてすみそうだ。