もうひとつの、蜜白玉のひとりごと

些細な出来事と記憶の欠片

今年読んだ本◇17冊目~20冊目

今年読んだ本の17冊目から。


◇17冊目:沢村貞子(さわむら・さだこ)著『わたしの献立日記』新潮文庫

品川駅PAPER WALLにて購入。沢村さんが二十数年間、日々の献立を大学ノートに記した献立日記の一部を紹介したもの。無地の大学ノートに線を引いて4つに区切って、はじめは夜ごはんだけ、そのうち朝ごはんも記すようになり、天気とか気温とか、少しずつ項目が増えていく。献立の合間には短いエッセイもある。数年前に、図書館で借りて読んだ記憶がある。昨年フードスタイリストの高橋みどりさんが『沢村貞子の献立日記』という本を書かれたこともあり、本書もよく見かけるようになった。簡潔で実用的だけれど、こまやかな配慮や温もりを感じる。それにしてもよく続くなあ、とひとりごとがもれる。「一度決めたことだから」という沢村さんの声が聞こえてきそう。

わたしの献立日記 (新潮文庫)

わたしの献立日記 (新潮文庫)


◇18冊目:中島京子(なかじま・きょうこ)著『のろのろ歩け』文藝春秋

これも品川駅PAPER WALLにて。ついつい買いたくなる本屋さんてうれしい半面こまったものだ。応援しているからいいのだけれど。本書はそれぞれ北京、台湾、上海が舞台の中篇3つからなる。「北京の春の白い服」の主人公・夏美は女性ファッション誌のベテラン編集者で、おそらく著者自身をモデルにしているのだろう。業界をよく知っているから、夏美や周囲のスタッフの言動も現実に即しているに違いない。中島さんのことだから、ただ過去の経験をなぞっているだけでは終わらないよね、と思いながら読み進むと、物語の最後には鮮やかなどんでん返しと敗北感、そのあとに少し遅れてやって来るすがすがしい爽快感、そして異文化の受容?だろうか。軽やかで小気味よい。ああ、すばらしい。

のろのろ歩け

のろのろ歩け


◇19冊目:山崎洋子(やまざき・ようこ)著『沢村貞子という人』新潮社

沢村貞子関連を図書館でどっさり借りる。著者の山崎さんは長年沢村さんのマネージャーを務め、沢村さんが女優を引退してからもずっと沢村さんのそばにいて最期を看取った方だ。沢村さんが書かれた本を読むのとはまた違う角度から、沢村さんを見ることのできた貴重な一冊。いろいろ調べているとその後、山崎さんは西麻布に秋田料理のお店を開いたようで、それは偶然先日テレビで見た「鹿角」だというから驚く。荒川静香さんとぐっさんがモリモリ食べていたあのお店ね。たどり着くべくしてたどり着いた感がある。勝手にだけれど。

沢村貞子という人

沢村貞子という人


◇20冊目:沢村貞子(さわむら・さだこ)著『老いの道づれ―二人で歩いた五十年』岩波書店

これもどっさり借りたうちの1冊。全篇、悲しい。亡くなったご主人の大橋恭彦さんに語りかけるようにして書かれている。山崎さんの本によれば、これを書いた頃は沢村さんは体調を崩していて、入退院もあり、なんとか書き上げたものだという。それを知ってから読んでよかった。知らなかったらめそめそしてつまらないとだけ思って終わってしまったかもしれない。夫婦とは何か。我が家の考え方に少しだけ似ている。結婚記念日を前に読んだのも何かの縁。