もうひとつの、蜜白玉のひとりごと

些細な出来事と記憶の欠片

夜の図書室 Libreria FERRO リブレリア・フェッロ

昨年の10月のこと。よく行くイタリアンワインバーで、店主と、本が大好きなお客さんMさんと、私の3人でお店の一角に本棚を作り、そこを図書室とした。本棚は3段でそれぞれが1段ずつ担当し、自分のお気に入りの本やお店にふさわしいと思う本を持ち寄っては並べている。ワインを飲みに来たお客さんは自由に本を読めるし、借りて帰ることもできる。

そのワインバーの名前はBACARO FERRO(バーカロ・フェッロ)といい、イタリア北部のヴェネツィア特有の酒場を模している。バーカロとはヴェネツィアの方言で、バールやバルなどと同じ意味をもつ。フェッロは直訳では「鉄」だけれど、ここでは「ゴンドラの舳先の飾り」を指す。私はここでイタリアワインを「イタリアワインを飲んでいる」と意識して飲み、そのおいしさに初めて出会い、特に北イタリアのワインが自分の好みにことごとく合致することに気をよくして、足繁く通うようになった。

仕事の帰り、ほぼ開店直後の早い時間に行くと、ときには貸切状態で店主とふたりで話をする。女性同士、年齢が近いせいもあって気軽に話ができる。そして彼女との共通項を見つけるにつけ、仲良くなりたいと思った。大人になってから誰かと仲良くなりたいと思うことはそうそうあることではないので、これはとても幸運な出会いだ。そうして話をするうちに生まれたのが、この本棚と図書室構想で、彼女は飲食店開業時からこのように本の好きな人が集まる空間を作りたいと思っていたという。一方の私もぼんやりとではあるが、似たようなことをずっと夢想し続けていたので、その仲間に入れてもらえるなんて願ってもない話だった。

何となく好きな物の周りをうろうろしていると、どこかで何かにつながることがある。発信すれば自然と集まってくる。このときもやっぱりそれは真実に違いないと確信した。 

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 図書室では読書会など本に関するイベントもやっている。昨夜はその読書会の3回目で、これまた本について心ゆくまでしゃべりたおす時間となった。読書会は毎回指定された課題本を読んで参加し、本の感想や、その他読書や本に関することを参加者同士で自由に話し合う場だ。もちろんおいしい食事とワインも用意されている。普段は自分ひとりで完結する読書が、他人と意見を交わす中で、また違った色合いになる。読書の世界の端が広がっていくのを感じる。

読書会の参加者は10人前後、男女は半々といったところだ。読書会の後は、毎回、高揚感に包まれて帰宅し、満足のため息が出る。話すのに夢中で、結局はあまりお酒を飲まないで終ってしまうのが残念といえば残念であり、次回の個人的な課題である。読書会は3ヶ月に1回を目安にしていて、次回は5月開催の予定。

ちなみに、これまでの読書会の課題本は次の通り。

第1回読書会 Libro1 「トリエステの坂道」~須賀敦子『トリエステの坂道』(新潮文庫ほか)より

トリエステの坂道 (新潮文庫)

トリエステの坂道 (新潮文庫)

第2回読書会 Libro2 「畜犬談」~太宰治『きりぎりす』(新潮文庫)より

きりぎりす (新潮文庫)

きりぎりす (新潮文庫)

第3回読書会 Libro3 「白いウズラ」~スタインベックスタインベック短編集』(新潮文庫)より

スタインベック短編集 (新潮文庫)

スタインベック短編集 (新潮文庫)


こんな図書室の名前はLibreria FERRO(リブレリア・フェッロ)。「フェッロの図書室」という意味である。リブレリア・フェッロの開室時間はバーカロ・フェッロの営業時間に準ずる。つまりは夜の図書室ということだ。


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