もうひとつの、蜜白玉のひとりごと

些細な出来事と記憶の欠片

ひざが痛いスパイなんて

たしか3月16日に開花した今年のソメイヨシノは、早い早いと言われ続けて、それでも2週間くらいはもった気がする。そのうち八重桜も咲きだして、町のあちらこちらに濃淡のピンク色のかたまりを見た。春先の天気は不安定だから、開花中には何度も大風が吹き雨が降って、そのたびに花びらやガクはどっさりと道に落ちた。それらは通行人に踏み固められて、晴れた日には塩漬けのような匂いを放っていた。

花見らしい花見はしなかったものの、通勤途中にも桜の木はたくさんあって、とくに今年は満開のソメイヨシノの姿にそわっとするような妖艶さを感じ、あまり長いこと眺めていると惚けてしまいそうだった。桜はチラ見するくらいがちょうどいいのかもしれない。花見といっても実際の花見は花なんてそれほど見ていなくて、食べて飲んでしゃべっているだけだから。

桜の時期は気忙しく、そうは言っても進学も就職も転勤もないのに、周りに飲まれてなんとなくそわそわしていた。4月になって目にする景色がピンク色から明るい緑色に変わって、やっと落ち着いてきたようだ。

小さな変化があるとすれば、4月から仕事帰りにときどき泳ぎにいっている。隣りの駅にある区のプールで、小1時間ゆっくり泳いだり歩いたりする。泳ぎはじめたいちばんの理由は原因不明のひざ痛改善のためで、こんなことを言うとまるでおばあさんみたいだけれど、本当に痛いんだから仕方ない。

ひざが痛いと日常生活の何気ない動きに困る。階段の上り下りはもちろん、ちょっとしゃがんだりとか、信号が点滅している横断歩道で小走りとか、そういうのが全部痛い。最初は左ひざの痛みだけだったのが、変にかばっていたのかそのうち右ひざも痛くなってきて、ついには両ひざともサポーターを買ってしまった。エエイ!

プール通いをがんばるのに少し早い誕生日プレゼントとして夫からいいものをもらった。水中で使えるウォークマン!耳に引っ掛けるところだけしかなくて、すべて耳元で操作する。その動きがちょっとしたスパイのようでもある。ひざが痛いスパイなんて・・・もうこれ以上ひざ痛について語るまい。